大人向け恋愛漫画「にこたま」の感想(ネタバレ含む)と紹介

恋愛漫画を読むのが好きです。昔から色々な少女漫画・恋愛漫画を読んできましたが、年齢を重ねてきたせいか、少女漫画としては王道の「高校生が主人公になっているマンガ」にそこまで手が伸びなくなってきました。

そこで取って代わったように読むようになったのが「大人の恋愛漫画」ってやつなんですけど、単純にエロとかそっちに話が進むわけではなく、結婚だとか家族だとか仕事だとか恋なんかがチラついて、いたずらに「いつまでも一緒にいようね(はあと)」みたいなことをほぼ言わないマンガなんですよね。

「なにが面白いの?」って思うじゃないですか?私も思うんですよ。でも、そんな大人向けの恋愛漫画で一気読みしてしまった作品があるので、今回はその「にこたま(全5巻)」を紹介します。

著:渡辺ペコ
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目次

にこたまってどんなマンガ?

2009年~2012年にかけて月刊モーニングで連載されていたマンガで、単行本は全5巻で完結しています。二十歳の頃から9年間一緒にいる、結婚こそしていないだけでほぼ夫婦という関係性のカップルが主人公です。突如2人の間に事件が起こり、それがお互いにとって「このままでいいのか」と思うキッカケを与えることになります。

よくある恋愛漫画のような「世界で一番〇〇が好き!」とか「〇〇無しでは生きていけない!」などのドラマのセリフのようなものがあるわけでもなく、お互いがそれぞれで納得して距離を置くという淡々とした流れは、通常の恋愛漫画ではなかなか見られるものではないでしょう。

年齢を重ねていくうえでの男女間の感覚の違いだったり、子供に対しての意識なんかがストレートに描かれています。ストーリー自体は万人受けするわけでもなく純愛でもなければドロドロした展開もない、言ってしまえば中途半端な展開かもしれませんが、これも1つの恋物語だと思えば存分に堪能できること間違いなし。

にこたまを楽しむポイント

物語序盤に訪れる急展開

コミックス1巻

9年間同棲している彼から「俺、こどもできた」って言われることの衝撃やいかに。これに対しての彼女の切り返しが「なに君 妊娠してんの?」「右と左にひとりずつ入ってんの?」ですからね。さすが9年連れ添った関係性はすごい。

どうやら彼は出来心による1回こっきりの火遊びでゴールを決めたようなのですが、読んでいて「え?え?」と思った読者は私だけではないはず。ページを飛ばしちゃったかと思ってイチからまた読み直したくらいですから。それくらい衝撃的なスタートダッシュでした。

彼女がどういう選択をするか

コミックス1巻

もし既に結婚していて子供もいる関係の2人なら「離婚して慰謝料ガッポリ」って話にもなるでしょうし、相手の女性が「責任取れ!」とわめきちらしたりしているのであれば踏ん切りもつくと思います。ただ「これから当たり前のように結婚して、夫婦になると思っていた関係の2人」が、お互いに好きだという気持ちを殺してまで別々の道を進んでいくかどうかという部分に注目です。

まだ次の恋愛に進む気力があったり、自分に自信がある人や付き合い始めて日の浅い人は、一切迷うことなく「よそで浮気して、挙句の果てに子供まで作ってきた男と一緒になんかいられるか!」と即決するでしょうが、中にはそうじゃない人もいると思うんですよね。そのあたりに注目しながら読むと面白いです。

彼がどういう選択をするか

コミックス3巻

一方で、彼もまたどのような選択をするのかについても大きな見所と言っていいでしょう。浮気相手は特に責め立てるわけでもなく、淡々と「1人で産んで育てるので、ご心配なく」というようなスタンスですが、それを聞いて「はい、そうですか」では済まされない部分もあるわけで・・・。

浮気をしてよその女を孕ませるという言ってしまえばしょーもない男ですが、そんなしょーもないだけの男なら9年と待たずに別れているであろうことも容易に想像できますし。彼もまた、どのような決断をするのか注目です。

アラサー世代、結婚を考えている層におすすめのマンガ

正直、恋愛漫画にしてはほとんどキュンキュンするような描写はないので、若い世代にとっては退屈じゃないかと思います。本作を楽しめるとすれば主人公たちと同じアラサー世代や、今付き合っている恋人と結婚を意識しているという層ではないでしょうか。

それでも主人公2人が出す結末には賛否両論あるでしょうが、この2人に似た境遇が一部でもあれば気持ちがわかる部分もきっと出てくるはずです。楽しい・楽しくないではなく何かを思わずにはいられない、そんなマンガです。

最後に

面白いか面白くないかは別にして、全5巻を一気に読み切ってしまいました。結末は「私ならその選択肢は取らないだろうなぁ」と思うものでしたが、なんとなく気持ちもわかる部分があったので概ね満足です。

絵が非常にほんわかしていて、マンガの背景ともマッチしています。過度にドロドロになりすぎず、だからこそ心理的に重くのしかかる場面なんかも見られるのでとても見応えがありました。アッという間に読み切ってしまうと思いますので、興味のある人はぜひ読んでみてください。

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