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サスペンスホラー『うなぎ鬼』の魅力をネタバレ無しで語る

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(2017/03/01内容追記しました)

タイトルで非常に興味をそそられ、表紙絵を見て読者は「0」か「100」かになると思うのですが、良くも悪くも非常にインパクトのあるタイトル&表紙絵になっています。読む前から「すっげー面白いorすっげーつまらない」の2択だろうと思わせてくれるマンガで、私の中では「すっげー面白い」に転んだのが、こちらの『うなぎ鬼』です。

ジャンルとしては「サスペンスホラー」なのかな?ダークな雰囲気が満載で「日本のどこかでも似たような事例が数多くあるんじゃないか?」と思えるような、遠からず近からずの世界観が読者の恐怖を上手く引き出していると言っていいでしょう。というわけで今回は、夢に出てきそうな恐怖が魅力の『うなぎ鬼』の魅力をネタバレ無しで紹介します。

 

 

タイトルの由来

〇〇鬼

読むまでは「たか鬼」とか「こおり鬼」の類の「鬼ごっこの一種」で、表紙のオッサンに追い回されて捕まってしまったら、良からぬ事態に発展する「うなぎ鬼」ってのを想像していました。結果、全然違ったんですけど・・・。

物語で読者の心をグッと引き付けるには、兎にも角にも出だしが重要だと思います。「吾輩は猫である。名前はまだない」ではありませんが、「これからどういう物語が展開されていくんだろう?」と読者に思わせることができれば、よほど面白くない展開が続いてしまう場合を除いて、滅多なことでは読者は離れないと思うんです。

 

冒頭の一文

知ってるかい?うなぎってのはタンパク質なら なんでも喰っちまうんだそうだ…… なんでもだぜ

上記の一文は本作の冒頭の一文になります。めっちゃ引き付けられますし、全3巻の物語を読み進めている最中ずっと「伏線」としての役割を果たし続け、脳裏に焼き付きっぱなしでした。これは明確な意図でもって付けられたタイトルだと言って間違いありません。

マンガに限らず何でもそうですけど、ある程度のビジョンを想像しながらタイトルを付けて発車したものの、途中で方向転換をすることによって「タイトルとの関連付けがうまくいかない」という作品は少なくないと思います。本作は明らかに「結末までが既に完成した状態で描かれたマンガ」です。個人的にタイトルがここまで引っ掛かったのは、もう「うなぎ鬼」か「あしたのジョー」かってくらい、メチャクチャ気に入りましたね。

 

どんな物語?

裏家業の道へ

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コミックス1巻

上記画像のオドオドした男性、名前を倉見勝というこの男が何を隠そう「第1巻の表紙を飾ったスキンヘッドでコワモテの男性」なんですけど、見た目からは想像できないくらいオドオドした男性で、同時に本作の主人公になります。

かつて勤務先が競輪場だったという倉見は、元競輪選手ではありません。友人に金を借りまくっては人脈を無くし、方々から金を借りまくってるうちに遂に当たり(ハズレくじ?)を引き当て、保険金をアテにした首吊りを進められているところを、現在の社長に助けられるようなカタチで裏家業の道へと足を踏み入れました。

 

仕事内容

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コミックス1巻

与えられた仕事は「借金の回収」や「風俗の斡旋」などで、明言こそされていませんが、いわゆる「その道を感じさせるもの」ばかりで、その内容に加えて「ある所に黙って50~60kgのコンテナをトラックで運ぶ仕事」を与えられます。それに対して「ただ運ぶだけで日当15万円」という手当が出るっていうんですから、怪しさ全開ですよね。

「中身は知る必要が無い」「妙なスケベ根性は出すな」と釘を刺され、怪しさを感じながらも日当15万円という手当に惹かれたため、その仕事を受けることになるのですが、コンテナを運ぶ先のある所というのが水産会社で「タンパク質なら何でも食べるとされている鰻を養殖している所」だというのが導入部分のストーリーです。

 

本作の魅力

見た目と中身の関係

倉見は社長の勧めでスキンヘッドにさせられ、オドオドした目線を相手に悟られないようにサングラスをかけさせられたところ、周りの人間が道で避けたりなどの大きな違いを身をもって実感していました。

しかし、コンテナを運ぶ先の水産会社の従業員たちは皆、指が無かったり顔面に大きな火傷の跡があったりと、完全に良からぬ方向に考えてしまうわけです。自分だって「でくのぼう」と呼ばれていたのに、見た目を少し変えただけで世界が劇的変わったことを体感しているにも関わらず、相手のことは外見で判断してしまうという矛盾。

社長からは「イイ人たちだ」と言われたものの、それに対して疑念を抱く倉見の葛藤が読者の恐怖心を上手く煽ってきます。見た目に反してイイ人たちなのか、それとも見た目通りの怖い人たちなのか、そこにも注目して読み進めてみてください。

 

運ばされている箱の中身

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コミックス1巻

やはり本作の1番の注目は「運ばされている箱の中身が何であるか」という部分です。倉見にとっては、自分の命をギリギリで救ってくれたうえにこうして仕事を与えてくれている社長が「中身については詮索するな」と警告しているわけですから、黙って任務をこなすだけだと理屈では理解していても、恐怖で足がすくんでしまう場面が多々あります。

私自身は読み進めていくうえで、箱の中身に関しては最後の最後までわかりませんでした。物語の中では多くの伏線が張られて、いろんな情報がチラつかされますが「全部が主人公の想像でしかない」という部分が引っ掛かってたからなんですけど、かと言って「じゃあなんだと思うの?」って聞かれても答えられないという・・・。

最終的に箱の中身が明かされたとき、「そうだったのか!」と思うか「やっぱりな!」と思うかは人それぞれですが、どちらに転んでも大きな読了感が味わえることは間違いないでしょう。

 

最後に

全3巻というボリュームも相まって、最後まで中だるみせず適度な緊張感を維持しながら読み進められるマンガです。

ヤクザ系のマンガは、グロ描写でもって恐怖心を煽ったりする風潮にあると思いますが、そこまでのグロイ描写が無いにも関わらずここまで恐怖を感じさせられるのは、やはり本作の表現技法が秀逸だからということの証明だと思います。最後までドキドキできるホラー、サスペンスをお求めの方はぜひ読んでみてください。