冬の暖房ボイラーの不具合は不凍液が足りないだけかも

冬の暖房ボイラーの不具合は不凍液が足りないだけかも

寒くなってくると暖房ボイラーの修理が一気に増え始めます。住んでる地域にもよると思いますが、早い地域では10月後半から増え始め12月~2月までがピークです。もし使用している暖房機に不具合やエラーが出てしまって動かなくなってしまった場合、住んでる地域によっては死活問題になってしまうというご家庭も多いのではないでしょうか。

暖房ボイラーには多くの故障内容があるんですが、動かし始めの時期に最も多い不具合は不凍液不足によるものです。春が来てからしばらく使うことがなくなり、冬が訪れたのと同時に使おうとしたところ、電源は入るのに全く動かないという症状だとすれば不凍液が足りないだけかもしれません。

というわけで今回は「暖房ボイラーが故障かな?と思ったときに、まず自分で解決できるかもしれない部分」について簡単にご説明したいと思います。

不凍液が不足している場合、暖房ボイラーがエラー(E043)を表示する可能性が高いです。

目次

不凍液とは?不凍液や暖房ボイラーに関する予備知識

不凍液に関する予備知識

こちらは古河薬品工業(KYK)の不凍液です。業者によって様々な呼び方(不凍液、循環液、暖房水、クーラント)があります。

簡単に言えば暖房ボイラーで温められる液体で「凍らない(水と比較して凍りにくい)、配管を腐らせない」という特徴を持ったものです。これが60℃~80℃程度に温められて循環することで、床暖なりパネルヒーターなりが作動して部屋が温まるというシステムになっています。

結論から言うと循環させるのは不凍液でなくて水でもいいんです。ただし水の場合は蒸発しやすかったり、配管が金属だと腐食させる原因になってしまいますし・・・。何よりボイラーが停止すると凍結の恐れが出てくるので、暖房ボイラーには不凍液を使用するのが一般的です。

不凍液には様々な種類が存在していますが、色や粘度などの特徴がそれぞれで異なり、違う不凍液同士を混ぜることは基本的には禁止です。ノーリツ製の暖房ボイラーだからと言ってノーリツの不凍液が使われているとは限らないので、補充する際は注意してください。

暖房ボイラーが動かない「故障かな?」と思ったら・・・

暖房ボイラーが動かない 「故障かな?」と思ったらチェック!!
  • 電気:電源が入るかどうか、ブレーカーが落ちていないか、コンセントプラグは差さっているか
  • 燃料:ガスはメーターで遮断されていないか、灯油はタンクに入っているか
  • 空気:煙突や排気口が塞がれていないか
  • 不凍液:量は足りているか

これらを確認して問題がないにも関わらず動かないときにだけ、修理業者に修理を依頼するようにしましょう。「使わない期間はコンセントプラグを抜いておこう!」と考える家庭も少なくないので、単にコンセントプラグが差さってないだけというパターンも少なくありません。

修理業者を呼ぶとそれだけで出張料・点検料が発生してしまうので、事前に確認できる部分は確認しておくのがおすすめです。不凍液の量を確認する方法は後述しています。

暖房配管に関する予備知識

暖房配管は大きく分けて2種類(密閉式と半密閉式)

暖房ボイラーの施工方法には大きく分けて2種類「密閉式と半密閉式(解放式)」があります。読んで字の通り「密閉されているか、されていないかの違い」です。使用している暖房端末や暖房回路の規模によって、施工業者が適切なものを選んでいることが多く、ほとんどの人は「特に希望してないけどこの配管方式だった」というケースがほとんどじゃないかと思います。

  • 密閉式:暖房配管内が高い圧力で保たれている、不凍液の補充が難しい
  • 解放式:暖房配管内が解放されている、ユーザーによる不凍液の補充が可能

不凍液が不足するとE043のエラーを出すことが多いですが、この時にユーザー側で不凍液を補充しようと思ったら半密閉式(解放式)でなければ難しいです。

密閉式と半密閉式のどっちか分からない場合の判断方法

  • 暖房ボイラー周辺に圧力ゲージや膨張タンクがある→密閉式
  • お家の中に温水コンセントがある→半密閉式不凍液の量を確認する方法
圧力計
膨張タンク

上記画像にあるような圧力計(左)や膨張タンク(右)がある場合は、ほぼ間違いなく密閉式です。多くのお家で暖房ボイラーの周辺にあるかと思いますが、たまに離れた場所や床下にある場合もあるので注意してください。

温水コンセント
温水コンセント

一方で上記のような温水コンセントがお家の中にあるという場合は、半密閉式の可能性が高いです。他にも「過去に自分で不凍液の補充をしたことがある」という場合は、半密閉式である可能性が高いです。

不凍液がないと暖房ボイラーは動かない

不凍液不足で出るエラーはE043

暖房ボイラーは空焚きを防ぐなどの目的で、機器内に「不凍液が入っているかどうか」を計測するためのセンサーが付いています。そこで不凍液が入っていないと検知されるとエラーを出して止まってしまうという仕組みです。

その時の症状としては「電源を入れて準備運動みたいなのが始まったかと思ったら、少ししてエラーが点滅している」というケースであったり、リモコンの電源を入れた瞬間にエラーが点灯してしまうというケースが多いです。この時に表示されるエラーはノーリツやリンナイなどの給湯器メーカー共通でE043(暖房水不足)であることが多いです。

この場合のエラー番号については取扱説明書に記載されているので、修理を依頼する前に確認しておくといいでしょう。説明書に記載されていない番号の場合はプロでないと解決することが難しい症状だと思われるので、各メーカーに修理依頼をした方が無難です。

不凍液の量を確認する方法

暖房ボイラーがE043を表示しているのであれば暖房水が不足していると思われますが、まれに「暖房配管内の空気が絡んだだけで不凍液は不足していない」というケースもあります。そのためE043が表示されても実際に不凍液の量を確認するのが望ましいです。

暖房水(不凍液)がどれくらい残っているかわからない
暖房水(不凍液)がどれくらい残っているかわからない

暖房配管が解放式ならボイラー本体のリザーブタンクを見ることで確認できます(密閉式の場合はリザーブタンクを使用しないため、中身は空っぽが正常です)。この時、リザーブタンクにはFULLとかLOWという目安が書かれていますが、FULLの位置が真ん中くらいになっています。

これは暖房ボイラーが燃焼して不凍液の体積が増えたときに逃げてくるためなので、不凍液を補充する際はFULLとLOWの間に収まるようにしてください。FULLのライン以上に補充しても、暖房ボイラーを動かしたときに溢れてしまって不凍液が無駄になってしまう可能性があります。

不凍液の補充方法(自分で不凍液を補充する手順)

不凍液の補充方法(自分で不凍液を補充する手順)

不凍液補充のやり方

半密閉式であることが前提ですが、暖房ボイラー本体の天板部分に補充口があります。化粧ビスで止められているタイプもあれば、キャップがはまっているタイプもありますが、どちらにしても「あ、ここから補充するんだな」っていうのが直感的に分かるようになっているはずです。

STEP
暖房ボイラーの電源を切る

暖房ボイラーが稼働している時に不凍液を補充するのは危険なため、電源を切ってしばらくしてから補充しましょう。

STEP
段防水注水口ふた(あるいは注水口キャップ)を外す
不凍液補充ステップ2

暖房ボイラーの上部にあることがほとんどです。古いボイラーだとビスが固まっていて外れにくいかもしれません。

STEP
暖房回路またはリザーブタンクに不凍液を補充する
不凍液補充ステップ3

注水口には膨張逃し弁の他に小さな穴も確認できます。膨張逃し弁を外して直接補充してもいいのですが、ボイラーが冷めきっていないと危険なため、逃し弁の横にある小さな穴に補充するのがおすすめです。

STEP
段防水注水口ふた(あるいは注水口キャップ)を元に戻す

屋外設置の暖房ボイラーの場合は、雨水などが侵入していかないようにしっかりとカバーをしてください。

STEP
暖房ボイラーの電源を入れて試運転をする

E043がでないことを確認してください。

不凍液はどのくらいのペースで追加が必要か

各家庭の暖房回路の規模によって変わりますが、半密閉式の場合はシーズン毎に2リットルほど追加が必要になるケースが多いです。理想を言えば「リザーブタンクに不凍液がどの程度入っているかを目視したうえで、追加するかどうかを判断する」のがいいと思います。

大量に不凍液補充が必要になる場合、または何度補充してもE043が再発するという場合は、暖房配管のどこかから不凍液が漏れている可能性があります。この場合は補充する不凍液が無駄になってしまうだけでなく、不凍液漏れによる二次災害(ボイラー内で漏れている場合は別の部品に不凍液がかかってしまうこと)が予想されるので直ちにメンテナンスを依頼してください。

不凍液は補充だけでなく交換・総入れ替えが必要

不凍液は定期的に交換・総入れ替えが必要な消耗品です。密閉式であればそんなに劣化はしませんが、それでも全く替えなくてもいいというものでもなく、半密閉の場合は見た目でわかるほど劣化します。

新品の不凍液であれば凍らない&配管を腐らせないという特徴を持っていますが、劣化した不凍液は配管を腐食させてしまう可能性があるので注意が必要です。万が一暖房配管が腐食してしまったとなると、修繕作業に多額の修理費用が発生してしまうかもしれません。

取り扱い説明書には恐らく「〇年で交換してください」というような一文が書かれているはずです。それはメーカー側の理想年数が書かれているわけですが、機器寿命が10年だと仮定すれば折り返しの5年地点で交換しておけば安心だと思います。

ノーリツの暖房ボイラーは3年に一度、リンナイの暖房ボイラーは2年に一度の不凍液交換を推奨していますが、不凍液交換も決して安い費用では出来ないため、個人的には5年に一回で大丈夫だと思います。

暖房ボイラーが故障した場合のリスクヘッジ

暖房ボイラーが故障した場合のリスクヘッジ 予備の不凍液&予備のストーブ

半密閉式の場合は予備の不凍液を所有しておくのがおすすめ

半密閉式の場合はユーザー側で不凍液を補充できるので、E043が出た時のことを想定して予備の不凍液を持っておくのがおすすめです。不凍液はホームセンター等でも売っていますが、現在使用している不凍液と同じ物を採用しなければならないので、施工業者に相談して購入するのがいいでしょう。

正月中などで修理業者と連絡がつかないような場合、不凍液がないという場合は応急的に水を補充しても構いませんが、不凍液の濃度が薄まるとそれだけ「暖房配管が腐食するリスク、不凍液が凍ってしまうリスク」が高まるので注意してください。

暖房ボイラーの代替アイテムは用意しておこう

私は雪国で暖房ボイラーの修理をしています。当然「直せるなら当日中に直すつもり」で仕事をしていますが、どうしても部品がなくて即日修理ができないという場合があります。部品交換が必要になると翌日の修理ということも難しく、最短でも2日~3日必要になることも珍しくありません。

「じゃあ直るまでに凍え死んでしまったらアナタ責任取れるの!?」と怒られたこともありましたし、怒られるならまだマシで「暖房なしで乗り切るなんて無理だ・・・」と、この世の終わりくらいの感じで落胆されるお客さんもいました。そんな時のことを考えて代替品を用意しておくことをおすすめします。

暖房ボイラーのスペアにおすすめなのが反射式ストーブです。電池で点火できるタイプなので、台風などの影響で停電になってしまった時も問題なく使用できます。最近は大きな災害も目立ってきたせいか、反射式ストーブの需要が一気に高まってきました。

暖房ボイラー1台にすべてを頼っているというご家庭では、それ以外の手段を持っていることで心に余裕が生まれるでしょう。暖房ボイラーの交換を検討する場面においても、ちゃんと見積もりをもらって考えるくらいの余裕を持っていた方が絶対にいいと思います。

そんなときにこういったアイテムを持っているのと持っていないのとでは全然違うので、心の拠り所という意味でも代替アイテムは用意しておくのがおすすめです。

最後に

暖房ボイラーに関しては「故障かな?」と思ったら、実は大したことなかったというケースも少なくありません。メーカーサービスに修理を依頼すると、最低でも出張料・点検料などの経費が掛かってしまいます。

暖房ボイラーの不具合において最も多いのはポンプの故障でしょうか・・・。その次はバーナーとかファンモーターの故障ですかね。基盤も多いような気もしますけど、それらに負けじと「単なる不凍液不足」というケースは少なくないので、故障だと思ったら不凍液の不足を疑ってみてください。

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