元自衛官が語る「体罰やパワハラに対しての考え」について【自衛隊の洗脳が解けない】

元自衛官です。自衛隊には数年しか在籍していませんが、陸上自衛隊の二等陸曹という階級までいきました。

個人的には「自衛隊に染まりたくない」という気持ちで退職し、一般社会で就職し直したわけですけど、最初の頃は自衛隊のライフワークと一般企業のライフワークの大きな違いに戸惑いました。

それでも必死にもがいて、自衛隊をやめてから2年くらい経過したらもう自衛隊の呪縛からは解き放たれ、一般人と呼べるほどになれた…と思っていたんです。

それがある時、まだ自分は陸上自衛隊に縛られていると自覚しました。そしてこれは、ある種の洗脳なのではないかと思っています。

というわけで今回は、元自衛官の私が「体罰やパワハラに対しての考えを太陽よりも熱く語る」ということで、ちょっと偏ってて世間一般的な考えとはズレている考えを書いていきます。

目次

一般の会社の暴力上司に出会って…

私は今の会社に入社して最初の3年間くらい、特定の上司にいつも殴られていました。

殴られていたとは言っても、げんこつで7割くらいの力で頭を叩かれるという感じで、1日中一緒にいれば10発くらいでしょうか。別に大したことはないんですけど…。というか、大したことじゃないと思ってたんです。

先日、その上司が「後輩への行き過ぎた指導」ということで、クビになりました

ウチの会社は小さい会社で、毎年新入社員を採用するような感じではありません。私は入社してから2年間は1番の後輩で下っ端だったんですけど、3年目になってからは後輩が出来て上司から叩かれることはなくなりました。

でもそれは、私がその上司に認められたのではなく、ターゲットが私の後輩になっただけだったんです。そして多くの後輩は長続きせず、もって3ヶ月というサイクルで次々と変わっていきました。

多くの別の上司たちはそのような体罰があることを知らず、私は知りながらも「それが別に大したことではない」と思っていたので、特に問題視されてこなかったのです。

ある時、何人目かの新入社員が2日とか3日で会社に来なくなり、なぜ来なくなったのかを社長に聞かれて「殴られてまで会社を続ける気はありません」とキッパリ答えたようで、それから問題が発覚しました。

 

「ミスしたら殴る」はおかしいことじゃないと思っていた

ハッキリ言って自衛隊では、挨拶をした・してないという些細なことで指導がある世界です。当時は「中学生の部活かよ」とか思っていましたが、最初の1年~2年はこんなのばかりです。

先輩に挨拶をしても、それが先輩にとって「あんなもん、挨拶したうちに入らねぇ」と言えば、それは挨拶をしていないということになり、なんらかの制裁があります。

個人的には殴られて済むならそれが1番手っ取り早くて、むしろ分かりやすくていいと思っていました。どちらかと言えば、陰湿な嫌がらせの方がこたえましたね。

例えば、先輩がわざと廊下を汚してそれを掃除させられるとか、外出許可を取り下げられたりとか。

私のいた部隊には武闘派の人間が少なかったので、あまり体罰っていう体罰はなくて、髪の毛を1mmレベルの坊主に刈られるとかその程度でしたね。殴られたことはあんまり無くて、突き飛ばされたりとか、物を投げつけられたりとかその程度です。

そういう世界に毎日いたので、いくら一般の会社とは言え「日常の業務でミスをしたら殴られる」くらいは当たり前だと思っていました。

社長から「なぜ殴られたときに相談しなかったのか」と聞かれる

社長からは「なぜ殴られたときに相談しなかったのか」と言われましたが、別に怪我したわけでもないのに言う方がおかしいと思っていたからであって…。

そもそも殴られた理由というのが「1度教えたことができていない」とかそんな理由なんですね。ここだけ切り取ったら、言われたことをできていない私に比があるじゃないですか?だから「自分ができないことを棚に上げてそれを申し立てるというのはおかしい」と思うのが普通だと思っていました。

で、今思えばなんですけど、その上司は「塩のひとつまみはこれくらいの量だ」という教え方をして、それと同じにできないと頭を叩いてくるって感じだったんです。

今思うと「そりゃ極めても1粒や2粒くらいは誤差が出るのが普通でしょ」って思います。でも当時は「なんとかしてできるようにならなきゃ」って真剣に思ってました。

 

自衛隊に染まると色んな部分がズレる(ような気がする)

世間的に「パワハラ」と騒がれることの意味がわからない

最近衝撃的なのが「パワハラ」という概念です。私は自衛隊にいたとき、飲み会の余興で「とにかく先輩たちを楽しませろ」と教わってきました。

大抵は今流行っている芸人のネタを自衛隊ネタに置き換えてやれば笑いが取れるので苦労はしませんでしたが「笑いが取れなかったら全裸になれ!」とも言われていました。先輩曰く、全裸になれば笑いが取れるらしいです。

実際に笑いが取れなくて全裸になった同期を何人も見ましたが、確かに先輩たちはゲラゲラ笑ってましたね。その時に「あー、自分はこの組織と感性が全く合わない」と感じたのを今でも鮮明に覚えています。

なので新入社員に「全力で余興をやれ」というのがパワハラに該当するという意味が全く分かりません

多くの人は「業務に関係ないことは~」という考えらしいので、一般的には上司という立場を利用して部下に対して「飲み会での余興を強要する」とか「カラオケで歌を無理やり歌わせる」なんてのはパワハラに該当するんでしょう。

自衛隊ではむしろ業務中に嫌な思いをすることの方が少なく、営内(自衛隊の寮)に帰ってから嫌な先輩と同じ部屋だったりすることの方がストレスだったので、業務に関係ないことで色々やられるのも慣れっこなんですよね。

そのため「おかしいことをおかしいと思えない人間になった」ような気がしています。

サービス残業に対して何も疑問に思わない

自衛隊にいたときは、とにかく年功序列なので、何をするにも「先輩を差し置いて自分がやる」ということは許されませんでした。

だから今の会社に入ってからも「先輩より先に帰ること=ダメなこと」「上司に電話を取らせること=ダメなこと」という考えがあり、ずっと会社に残っていたんです。

ただ、ある時「自分の仕事が終わったんなら早く帰っていいよ」と言われたことがあり、これを「試されている」と捉えて帰らなかったんですね(自衛隊入隊時に座学で「眠ければ寝てもいいぞ」と言われて本当に寝たら、あとで次の日に置き上がれないほど腕立てや空気イスをやらされた経験から)。

その時、私が帰らない様子をみた当社の上司が「意味ないことに会社も残業代だせないじゃん?」という最もらしい理由で説得してくれたのですが、そもそも私はタイムカードのようなものは定時にしているので、残業代なんか出てないんです。

会社は8:30からですが、少なくとも8:15分には出社するように言われており、こないだクビになった上司(私を3年間殴っていた上司)が毎朝8:00前に来る人だったので、私は7:30に出社していましたが、それも8:30に出社していることにしていましたし、それが当たり前だと思っていました。

実際に自衛隊は公務員ですが、時間にはきっちりしておらず(変なところできっちりはしてるけど)、普段の業務の終わり時間にはルーズな傾向があります。

しかし、訓練などの時間には1秒単位でうるさく、例えば1300開始なら5分前行動と言われ1255には訓練が開始できる状態にしなければなりません。

さらには、5分前に準備万端にしなくてはならないのであれば、訓練に必要な準備があればそれを準備するために30分も前に行ったりもするので、ぶっちゃけ時間に関しては「遅れれば死ぬほど怒られるし制裁があるけど、早く行く分には問題ない」ということで、私は早め早めに行動してました。

それが未だに抜けず、サービス残業についても何も思わないし、誰よりも早く会社に行かなければならないという気持ちも根付いています。

 

人間味がなくなる

例えば友達と飲み会をしていて、友達から会社の愚痴とかを聞かされるじゃないですか?とんでもなく嫌な上司の話とか。

その友達は「こんなひどいことやらされているんだよー」と熱く語り、本来なら「うわー、それきついね」とか「よく頑張ってるね」って言ってあげるのが正解なのですが、多くの場合で「なんだ、大したことないじゃん」って思ってしまいます。

そりゃそうですよね。1日に10発殴られても大したことじゃないと思うし、仕事の失敗で丸坊主にするのも大した罰じゃないと思ってるし。そんな奴に通じる愚痴なんか、相当なレベルでもないと通用しないですよね。

私は数年間の自衛隊生活において「自分の中でのストレス耐性」はメチャクチャ高くなったと思っていますが、その代わりに「他人を思いやる感情」というか「人間味」のようなものを無くしたような気がします。

もちろん飲みの席での余興などについては、自分も好きでやっていたわけではないので「俺もやったんだからお前もやれ」とは言いません。でもそれが嫌で愚痴ったりそのことに関して疑問を持つのは、本人の甘えじゃないかと思ってしまいます。

恐らく多くの人の考えは「日常の業務に関係ないことをやる必要はない」って感覚が普通なのでしょう。私は職場の飲み会も仕事だと思っているので、もう完全に毒されていると実感しています。

(こういう話をすると「仕事なら残業代を出せ」という人もいるかと思いますが、私はサービス残業についても何も思わないので、飲み会で深夜の2時とかまで拘束されようが、サービス残業をしているという気持ちでいます)

自衛隊では多くを学び、多くを捨てた

もちろん元・自衛官が全て私のようになるわけではありません。少なくとも自衛隊を辞めた人の多くは「この組織、絶対におかしい!」と感じて辞めているはずなので、多くの人は一般社会に順応していると思います。

しかし、私も自衛隊をやめてだいぶ経つので、もう完全に自衛隊っぽさは抜けたと思っていたのですが、連日に渡って毎日のように報道されるパワハラや体罰のニュースを見て、自分の感覚が世間と大きくずれているという感覚になりました。

確かに自衛隊入隊当初は、年下の先輩に「てめぇ」と呼ばれたり、挨拶をした・してないでバカみたいに腕立てをさせられたり、違和感だらけだったはずなんです。

それが今では、それらを大したことがないと思ってしまうのですから、一種の病気と言っていいかもしれません。

自衛隊では多くのことを学びました。特に今お客さんを相手に商売をしていて、多少の理不尽さには問題なく耐えられていますし、多少嫌な奴くらいなら自衛隊には掃いて捨てるほどいたので、あまり人を嫌わなくなったというのはいいことだと思っています。

しかし、人の痛みを理解できなくなったというか、一部の人が本気で悩むようなことまで「大したことがない」と思ってしまうようになったのは、大きな問題だと気付きました。

元自衛官がみんなそうだとは言いませんが、少なくとも私は自衛隊生活で知らず知らずのうちにそのように洗脳され、人を思いやれなくなっているような気がします。

幸い、それを人に強要しないのが唯一の救いだと思っていますが(私は自分が早く出社しているからと言って後輩にそれを強要することはないし、後輩が1人で余興をやりたくないというなら一緒にやる)、さすがに人の愚痴に「分かるわー」と言えないというのは、一種の欠陥のように重く受け止めることにしました。

 

最後に

こんなこと実際に現役自衛官の人に言ったら怒られちゃいますけど、あんなところで何年も働いていたら、何かしらの感情が欠如してないとやっていられないと思います。

私は「階級社会とは言いながらも実際には階級で序列は決まらず、自衛隊で何年飯を食ったかが重要」という些細なことから、あとは「自分より下の階級の大先輩に対して命令口調で指示しなければならない瞬間」などが嫌で自衛隊を辞めました。

指導する立場になったら、理不尽なことで後輩にイチャモンを付けて怒るのが指導だと言われ、それができずに辞めました。

私はやめた当時「自衛官としては自分は足りなかったかもしれないが、人間として間違ってはいない」という気持ちで退職したのに、今は人間としてもおかしいんじゃないかと思い始めています。

そして、今までは何とも思わなかったことに気付けたということが、不幸中の幸いだったなぁと。治るかどうかはわかりませんが、気付けただけでも儲けもの。これから真剣に向き合っていこうと思う次第です。

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