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【少女漫画】SFと恋愛の融合!少女漫画『orange』が面白い【ネタバレ】

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(2017/02/22内容追記しました)

いやー、久々に熱くなれるような少女漫画・恋愛漫画を見つけてしまいました。高野苺さんが描いたSF青春ラブストーリーというジャンルのマンガなのですが、その名も『orange』です。本作は2012年に連載が開始され、休載などを繰り返した末に2015年の11月にコミックス最終巻(5巻)が出版されて完結。物語は「10年後の自分から手紙が届く」ところから始まります。

好きな人に対して素直に好きと言えないもどかしさ、男女間の友情などを描いているあたりは普通の少女漫画ですが、本作における最終地点は「同級生の自殺を防ぐこと」です。若干テーマが重く、普通の「キャッキャ、ウフフ」な展開ではありませんが、これまでにアニメ化、実写映画化されており、さらにアニメ映画化(2016/11/18から公開予定)もされるとのこと。知ってる人もメチャクチャ多いでしょうし、知らないという人も1度読めば、その人気の高さがすぐにわかるでしょう。

私はマンガ全般が大好きで、これまでにも『orange』がアンテナに引っ掛かったことは幾度となくありました。しかし「タイムスリップという概念を、たった1度きりの青春時代の恋愛に持ち込むな!」と、読まず嫌いをしていたんです。・・・もっと早くに読んでおけばよかった。今回は『orange』の魅力を自分なりにまとめていきたいと思います(ネタバレありです)。

 

 

あらすじ

(↑はアニメ映画の告知動画になります)

舞台は高校2年生の1年間。始業式の日に、差出人が自分の名前になっている手紙を受け取った高宮菜穂。その手紙には、コレが10年後の自分が書いた手紙だということと、日記のようなカタチで、これから実際に起こることが綴られていました。

始業式の日、人生初の寝坊をすること。「成瀬翔」という名前の転校生がくること。球技大会の日に、翔のことを好きになってしまうこと。そして、この手紙を書いた10年後には、翔がいないということ。大切なものを失わないでほしいということ。「翔のことをしっかり見ていてほしい」ということ。

徐々にその手紙が本当に10年後から送られてきたものだと思い始めた菜穂は、未来を知るということに対し恐怖を覚えながらも「10年後の今、翔はここにいません」の一文が引っ掛かり、その手紙に書かれている『後悔した行動』を変えることで、未来を変えようとし始めたのでした。

 

見所

手紙の内容が実行できない

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コミックス 第1巻

「あの時、こうすればよかった!」という後悔

10年後の自分から送られてきたという手紙には、10年後の自分が後悔してしまったことが書かれています。誰しもが「あの時、こうしていれば良かった」という後悔は、いくつかあるのではないでしょうか。とは言え、もしかするとそっちを選んでいた方が、実は良くない結果だったかもわかりません。「10年後の自分が選ばなかった選択肢を、今の自分が選べるだろうか」というのがポイントです。

 

簡単には言うけど・・・

AとBの選択肢があって「自分はAを選んで後悔している。だから、Bを選んでみてほしい」と、未来の自分に言われたらどうですか?「その手紙を読んでいなければ、間違いなくAを選んでいたはずの状況で、Bを選べるか」という話です。例えば、学生時代。好きな人に告白する勇気が出なくて、それを後悔している人がいるとします(誰とは言いません)。「フラれてもいいから、想いは伝えた方がいいよ」って、未来の自分から手紙がきたとしましょう。

本来、告白するという選択肢を取れなかったチキンですから、「直接言うのはちょっとなぁ・・・」ってなると思うんですよ。悩んだ挙句、LINEとかメール、なんなら直筆の手紙で気持ちを伝えようとした結果、それが全校中にさらされて、笑いものにされるという事態に発展してしまったらどうでしょうか。きっと10年後に「告白はしない方がいい、もしくは直接言った方がいい」という手紙を書くことになりそうな気がしません?

 

自分に置き換えた時に、壮大なドラマが生まれる

本作ではマンガという特性だからということもあるでしょうが、「なんで〇〇をしなきゃいけないか」の理由については一切触れられていません。手紙には始業式の日、翔を「一緒に帰ろうと誘わないでほしい」と書かれています。これが「私達が強引に誘ったせいで、6列になって歩いていたら、1番車道側を歩いていた翔が事故に遭ってしまうから」って書いてあったら、そりゃ誘わないかもしれませんけど、理由が書いてないんですよ。

これが「1年間の出来事を手紙に書かなきゃいけないがゆえに省略された」のか、それとも「マンガにおけるタブー」なのかはわかりませんが(おそらく後者)、作中でも『実行できないこと』がいくつかあります。その辺を「自分だったら・・・」と考えながら読むと、非常に楽しめるのではないでしょうか。

 

男友達が超絶イイ奴 

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コミックス 1巻

この背の高いイケメン君、名前を「須和弘人」と言いますが、性格もイケメンすぎて眩しいくらいです。ちなみに10年後の世界では、菜穂の旦那さんになっていました。通常、少女漫画には「ヒロインが好きになる男はツンデレ系で、ヒロインの傍には男女間の友情が成立している優しい男もいる」というのが相場ですが、得てしてこのような三角関係において男2人の仲はあまりよろしくないというのがセオリー。

必ずヒロインのいないところで「アイツを泣かせんなよ。俺がもらってもいいのか?」的な修羅場があったりして。一応、本作にもそのようなシーンがありますが、全然嫌味っぽくなくて超絶スマートです。しかもこの須和弘人、翔を失わないように必死に動きます。更に言うなら、そこに嫌味っぽい行動が一切ないんです。

ちなみに菜穂だけじゃなく、10年後の須和も高校2年生の自分に手紙を出しているのですが、これが衝撃ですよね。自分の妻が過去に好きだった男を救おうとしてるんですよ。「アイツが死んだから、コイツを手に入れられた」とか、そういうセコイ事を考えるような人間じゃないんです。超、カッコ良すぎ。

 

パラレルワールド

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コミックス 2巻

タイムトラベルという概念

物語の序盤で「恐らく伏線になるんだろうなぁ」と思われる「タイムトラベル(授業)」のシーン。先生が「タイムマシンを作る事はできる」と言っています。ただし、ダイムパラドックスの観点から『パラレルワールド』という概念が採用されており、「仮に翔を救うことができたとしても、未来の自分がいる世界の翔が助かるわけじゃない」と嘆いているのが上記画像です。

これを知ってたうえで、未来の須和が協力しているのかもしれませんが(おそらくないと思いたい)、この手の話は本当に面白いと思います。宇宙の話とか、いつまでも聞いてられるんですけど、そういう人って私だけじゃないと思うんですよね。

 

バミューダトライアングル

あ、そういえば「どうやって10年後の自分が手紙を送ってきたか」についてですが、それだけが本作における唯一の『気に入らない部分』と言いますか、正直「なにも言及しなくても十分成立していた」と思う部分です。あくまで私の場合ですが、ストーリーの構成やキャラクターたちの心情・心理を描いた描写が巧みすぎて、「ところで、手紙はどうやってきたの?」なんて微塵も考えずに読み進めてたんですね。

それが最終的に「どうやって送ってきたか」的なことに言及しているシーンがあるんですけど、ハッキリ言って「いらなかったなぁ」と。その部分を触れずにいたところで、誰も「未来から手紙って、どうやって送ったの?」なんて、野暮なことは言いませんって。逆に言及されたことによって「・・・それ、おかしくねぇ!?」と思ってしまいました。

 

個人的に好きな名シーン

「バカね」

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コミックス 2巻

ふとした会話から須和が菜穂のことが好きだと判明し、「菜穂と翔が付き合ってもいいの?」という問いに対して、須和は「そしたら嬉しい」と答えました。そこで貴子が「バカね」と一蹴するシーン。『「そしたら嬉しい」と笑顔で答えた表情』と、この『全然、嬉しくなさそうな表情』のコントラストが、少女漫画にはありがちと言えばありがちなんですけど、気丈に振る舞った人間に対して、辛辣な一言が言えるっていうのがいいなぁなんて思うわけです。

「わかった、でもどうしてもダメだって思った時は相談してね」とかじゃないんですよ。この場面における本当の優しいセリフは、考えれば考えるほど「バカね」に落ち着きます。このセリフの前に貴子は「アンタが協力してって言うなら私はしてもいいけど」と言っているんですが、これは予め乗っかって来ないことがわかっていたうえでした発言じゃないかと思います。だから「バカね」なのかなぁと。

 

誕生日プレゼント

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コミックス 3巻

これは「10年後の須和から高2の須和に届いた手紙」です。この手紙を須和が菜穂に見せているシーンなのですが、いい所で手紙が終わってしまっています。「この続きは・・・?」という菜穂の問いに対し、須和は「大したこと書いてなかったから、家に置いてきた」というようなことを言うのですが、ここメチャクチャ好きなシーンなんですよね。

更に言えば「10年後の須和が、この手紙を菜穂にも見せるだろうと予測して、あえてここで区切ったんじゃないか」とも思えるくらいの勢いです。これを見て、須和の良さに気付かない人間なんていないと思いますよ。これが伏線になって、素敵な誕生日のシーンが生まれたんだと思うと、それを演出した須和は粋な漢といってもいいでしょう。

 

「そうだな」

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コミックス 4巻

 「10年後もあんな2人が見れるといいねー」というアズのセリフに1テンポ置いてから「そうだな」と言った須和・・・を意味深な表情で見つめる貴子のシーンが好きです。実はこのとき、須和と貴子だけが「須和と菜穂が結婚する未来がある」ことを知っています。アズの言った「10年後」というワードに思う所があって、即答できなかった須和・・・・を意味深な表情で見つめる貴子。

須和がイイ奴すぎて、「簡単に諦められる程度の感情だったんでしょ?」というような嫌味すら言えないくらいのレベルです。そう思うのと同時に、「実は貴子も究極的にイイ奴なんじゃないか説」が浮上してきました。というのは今作では、貴子の恋心の描写について一切描かれていません。「実は貴子は須和のことが好きだったんじゃ・・・」とか考えだしたら、「本来の10年後で菜穂と須和が夫婦になっている未来も、貴子にとってはどうなんだろう?」と思ったり。いやー、かなりイイ味だしてますよ、貴子さん。

 

良い方向だと思う

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コミックス 4巻

棒倒しでケガをした翔を手当てしようとした菜穂に対し、翔が怒鳴ったシーンです。これに対して「どっちかと言ったら良い方向だと思う」と言ったのは須和。ここだけ見たら「菜穂と翔がこじれて、こっちに転がり込んでくる可能性が出てきたぜ!ひゃっほーい!」という思考からくる発言とも取れなくもないですが、実際はイケメンすぎる発言です。

まぁ早い話が『やきもち』ではあるんですけど、翔は結構な剣幕で怒っていたので、菜穂は相当ビビったと思います。実際に、その後で結構気にしているシーンが出てきましたし。「あー、あいつ妬いてるだけだから大丈夫!」言えば、菜穂もそれなりに安心したんじゃないかと思いますけど、あえてそう言わなかったのは、須和の精一杯の意地悪なのかなーって思いました。

最終的には翔が正直に菜穂に謝るので、それの方がマンガの演出としてはいいですけどね。「それすらも須和が見越してたんじゃないか・・・」と考えてしまうのは、私の悪いクセです、はい。

 

今どこにいんの?

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コミックス 第5巻

簡単に説明すると「『二年参り』で菜穂と翔がケンカ→須和が慰める→須和と菜穂の結婚フラグが立つ」という流れになっているので、須和は「二年参りには行かない」という選択をするのですが、「なんで来ないんだよ!」的な電話に対して「紅白見てた」と言いつつも、電車のアナウンスが拾われてしまったために急いで電話を切ったのが、上記画像のシーンです。

菜穂も翔とケンカしてしまう未来は知っているので、それを回避しようとしますが、結果的にそれは叶わずケンカしてしまいます。ここで須和が慰めることで、須和と菜穂の恋愛フラグが立つんですけど、須和の行動がもはや神。「逆にイイ人すぎて、イイ人じゃないんじゃないか?」と思えるほどです。作中にもありましたが、これで菜穂と翔が結ばれる未来ができたとして、それは一方で残酷な話だよなぁと。

 

最後に

リアルタイムより少し遅れての『orange』との出逢いでしたが、タイトルの由来といい、ストーリーの構成といい、余韻を残すフィナーレといい、抜群に面白い作品だと思いました。読まず嫌いだった過去の自分に手紙書いてやりたいくらいです。

登場人物が全員「クセの無いイイ奴」ってのも成立するのかどうか疑問でしたが、全然問題ありませんでしたね。私はマンガを読み終わったばかりですが、アニメ版や高野苺先生の他の作品は見てみたいと思っています。

実写版はどうなんでしょう。Amazonの評価は高かったですけど、個人的には「原作の雰囲気を大切にしたい作品」なので見ないかもしれません。あれこれ不満が出てしまいそうなので。でも、アニメ映画は見に行きたいなぁ。『orange』は私にとって『ハチクロ』以来の大ヒットでした。読んでないという方は、ぜひチェックしてみてください。